特許出願非公開制度について

 本稿は、2024年5月1日から開始された特許出願非公開制度の概要を説明し、非公開になる(保全指定される)までの流れと、保全指定された特許出願の扱いについて解説しています。

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特許出願非公開制度とは

 特許出願非公開制度とは、公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が特許出願の明細書等に記載されていた場合、出願公開、特許査定及び拒絶査定といった手続を留保する制度です。
 参考:特許出願非公開制度について(特許庁)

 本制度は、令和6年5月1日から経済安全保障推進法に基づき、2024年5月1日に開始されました。本制度によって、政令で定める特定技術分野に属する発明が特許出願の明細書等に記載されているときには、その発明に関して情報の保全をすることが適当と認められるかどうかについて、保全審査をすることになります。保全審査の結果、保全指定という手続きが行われることで、出願公開、特許査定及び拒絶査定といった手続を留保されます。

保全指定が行われる流れ

 所定の手続きが留保される特許出願は、保全指定が行われた特許出願です。特許出願に対して保全指定が行われるまでには2段階の審査が行われ、これらの審査の結果と出願人の意思に基づいて、保全指定が行われます。特許出願から保全指定が行われるまでの流れを下記のフローチャートにまとめました。

保全指定までの流れ

特許出願

 全ての特許出願が保全指定されるかどうかの審査対象になります。

一次審査

 一次審査が特許庁において行われます。一次審査では、特定技術分野に属する発明が明細書等に記載されているか否かが審査され、記載されている場合には、出願書類が内閣府に送付され保全審査(二次審査)が行われます。なお、保全審査は、特許出願人から保全審査に付することを求める申出書が提出された場合には、その発明も保全審査の対象になります。

保全審査(二次審査)

 保全審査が内閣府において行われます。二次審査では、機微性の検討と産業への影響等の検討とが行われます。具体的には、出願人との対話、専門家からの聴取、防衛省等の関係省庁に対する意見照会等が行われます。

出願人の意思確認

 保全指定をしようとする場合、内閣総理大臣は、特許出願人に対して保全対象発明となり得る発明の内容を通知するとともに、特許出願を維持するか取り下げるかの意思確認をします。なお、フローチャート上は、保全審査の後に出願人の意思確認が行われる流れになっていますが、必ずしも保全審査の後に行われるわけではなく、「保全指定をしようとする場合」になれば、保全審査の最中でも出願人の意思確認が行われると考えられます。

出願取下げ

 出願人の意思確認において、特許出願人は特許出願を取下げることができます。

保全指定

 保全指定がされると、その結果が特許出願人に通知されます。このとき、特許出願に係る明細書等に記載された発明のうちどの部分に記載された発明が保全指定の対象であるのか示されます。

通常の特許手続

 一次審査や保全審査において、保全指定の対象外であると判断された場合、その特許出願は通常の特許出願手続きに進みます。

保全指定された特許出願の扱い

特許出願が保全指定されると、出願人は以下の制約を受けることになります。
・出願の放棄、取下げが禁止
・発明の実施に許可が必要
・発明内容の開示が禁止
・発明情報の漏洩防止のために必要な措置を講じること
・発明共有事業者について変更の届出をすること
・外国への出願が禁止

特許出願非公開制度についての私見

 特許出願非公開制度はまだ始まったばかりの制度であり不明点も多いです。そこで、今年の日本弁理士会特許委員会は、私を含む数名のチームで特許出願非公開制度について最新情報の分析を行い、代理人や出願人にとって有益な情報を提供する予定です。

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