11/6に特許庁の産業構造審議会の特許制度小委員会が開催されたようです。
議題は2つでした。
①国際的な事業活動におけるネットワーク関連発明等の適切な権利保護について
②DX時代にふさわしい産業財産権手続に関する制度的措置について
このうち、「①国際的な事業活動におけるネットワーク関連発明等の適切な権利保護について」は、海外に設置されたサーバ等から日本に向けてサービスを提供するといった、今では当たり前になったサービスに特許権を行使できるのかという論点について議論するものです。
この論点については、過去数年にわたって、調査・検討が行われてきていますが、これまでは特許権を行使できるかどうか明確ではありませんでした。しかし、昨年までにドワンゴとFC2等との間での特許権侵害訴訟に関して2件の高裁判決(平成30年(ネ)第10077号、令和4年(ネ)第10046号)が出て、ドワンゴ(特許権者)が高裁で勝訴したため、一定の条件下であれば特許権を行使できることが明らかになりました。
今回の資料によれば、「実質的に国内の実施行為と認める要件(※)を明文化する方向での法改正を視野に検討を深めるべきと考える。」と23頁に記述されており、法改正する方向で検討が進むように思えます。
※ 発明の実施行為の「一部」が国内であって、発明の「技術的効果」と「経済的効果」が共に国内で発現していること
しかし、この資料には、”発明の実施行為の「一部」が国内であって”と書かれていますので、全部が国外にあるような場合には、国内の実施行為とは認められない可能性があるように思います。例えば、サーバの特許権を有していたとしても、海外のサーバから日本国内向けにサービス提供している事業者には特許権を行使できない(国内の実施行為とは認められない)可能性があるということです。サーバが海外に設置されている場合、サーバの構成は全てが海外に設置されていることになり、”「一部」が国内”とは認められず、国内の実施行為とは認められない可能性があるからです。もしこのような問題が生じうる場合には「技術的効果」、「経済的効果」等の他の要件によって柔軟に解釈できるようにしてほしいように思います。
本稿は第50回特許制度小委員会の資料を見た、筆者(個人)の見解を述べたものであり、特定の団体の見解を述べたものではありません。