秘密特許制度の概要

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秘密特許とは

秘密特許とは

秘密特許とは、公開することが害になるような情報を含む特許出願については、非公開にする制度である。特許権は発明公開の代償として国家から付与される権利であるため、特許出願された発明は、原則としては公開される。しかし、非公開にするべきと認められるような発明は、例外的に非公開とされるのである。

 秘密特許制度は、導入されている国と、導入されていない国がある。G7やIP5(世界特許出願の8割を占める5つの特許庁)等の主要な知財立国の大部分は秘密特許制度を導入している。その中で唯一導入されていない国は日本である。しかし、この日本も、秘密特許制度の導入に向けて検討が進められている。政府の経済財政運営と改革の基本方針2021 によれば、各国の特許制度を念頭に入れつつ検討を進めるようだ。

特許の公開制度について、各国の特許制度の在り方も念頭に置いた上で、イノベーションの促進と両立させつつ、安全保障の観点から非公開化を行うための所要の措置を講ずるべく検討を進める。

政府の経済財政運営と改革の基本方針2021

秘密特許が必要な理由

 秘密特許が必要になる主な理由は、発明の公開によって外国への技術漏洩の防止である。特許権は発明公開の代償として付与されるものであり、原則として公開される。公開された情報は、日本だけではなく外国から誰でもアクセスできる。しかし、大量破壊兵器の開発などにつながる技術に外国からアクセスされることは、大量破壊兵器の拡散につながるため望ましくない。

 このため、世界各国では秘密特許制度を設けて、このような発明については公開されないように対応しているのである。今の日本は秘密特許制度を設けていないが、このような国際的な動きに足並みをそろえる必要がある。

日本の秘密特許

日本にも秘密特許はあった

 しかし、日本にもかつて秘密特許制度はあったようだ。具体的には、明治18年専売特許条例の導入から、昭和23年の特許法改正まで存在していたらしい。そして、1571件の秘密特許が登録されていたという。八木雅浩の論文※の表3によれば、出願は軍に関するものが大半であったようだ。民間企業としては日立製作所、神戸製鋼所、三菱重工業等の大手メーカーも秘密特許を出願していたようだ。

特許制度に基づく技術情報の公開による大量破壊兵器の拡散リスク(CISTEC Journal 2014.11 No.154)

現在の日本は自粛を要請

 昭和23年の特許法改正により秘密特許の制度は廃止された。しかしながら、日本で大量破壊兵器の開発につながる技術は今も開発されている。このような技術に対して日本は特許出願の自粛を求めている。しかし、自粛に過ぎないことから強制力はなく、そもそも自粛対象となる技術がどのような技術であるかも具体的にはなっていない。このため、民間企業は独自の基準で特許出願をしたり、しなかったりしているのが現状である(そもそも民間企業は独自の基準を有しているのかすらもわかっていない。)。

秘密特許の導入

このような背景から、近年の日本では秘密特許の導入について検討が進められている。ただ、産経新聞の記事によれば、対象は「重要特許」であり、大量破壊兵器の拡散につながるといった記載は見られない。

木原誠二官房副長官は13日の記者会見で、岸田文雄首相が掲げる経済安全保障分野の法整備に関し、重要技術の特許を非公開にする「秘密特許」の導入を検討課題とする考えを示した。

2021.10.13 産経新聞「木原副長官、「秘密特許」導入は検討課題

発明の公開の代償との関係

秘密特許の導入を議論すると、必ず話題になることが、発明の公開の代償との関係である。特許権とは、発明を公開した代償として独占権が付与されるものであるため、秘密特許のように公開されない発明に独占権が付与されるのは、特許制度に矛盾しているように思われる。この論点については秘密特許制度を有する国によって規定が異なっており、通常の発明のように権利を付与したり、審査を行わなかったりとさまざまである。日本で秘密特許制度が導入された場合にどのような制度になるのかは現時点では予測がつかない。なお、秘密特許制度と、発明の公開の代償との関係については、故吉藤先生が特許法概説(第13版)にて、次のような趣旨で述べられている。

 特許出願における発明の公開とは、発明の内容を政府に開示することである。政府に開示された発明を公表することは政府の責務である。このため、発明者による発明の公開の義務は、政府に開示された時点で果たされるのであり、発明の公開の代償とは矛盾しない。

つまり、発明の公開とは発明者が政府に発明を開示することであり、公衆に開示することではないということである。発明を公衆に開示(出願公開)するか、秘密(秘密特許)にするかは、発明を開示された政府が国家の安全保障の観点から判断すればよいということだ。

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