特許権侵害に反論するために出願経過書類が重要である理由

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特許権侵害かも?と思ったら

 自社の製品が、他人の特許権を侵害しているかも…と思ったときには、その特許権の特許請求の範囲と、自社の製品とを突き合わせて、本当に特許権侵害しているのか確認することが大切です。その時、特許請求の範囲と、明細書だけではなく、出願経過書類も併せてチェックしてみてください。
 参考:侵害警告対応・弁理士、弁護士に相談する前に

出願経過書類が重要である理由

出願経過書類とは

出願経過書類とは、その特許出願から登録までの間に、出願人と特許庁がやりとりした過程が記載された書類です。出願経過書類の代表例は、意見書と手続補正書です。意見書や手続補正書等の出願経過書類を読むことで、発明の本質的部分はどこなのか、不明確な請求項の文言をどのように解釈すればよいのかを、理解できることがあります。

出願経過書類が重要である理由

出願経過書類が重要である理由は、禁反言の法理によって特許権者の権利行使を封じることにあります。出願経過書類を見れば、特許の権利化までに出願人が主張していたことと、警告や訴訟等の権利行使で出願人が主張していたことと、矛盾していることがあります。このような矛盾を禁反言の法理(エストッペル)と呼び、信義則に反することだと考えられています。なお、アメリカでは、クレーム解釈は、特許請求の範囲、明細書そして出願経過書類の3種類によるべきものであると考えられているくらい出願経過書類は重要な書類です。

出願経過が参酌された裁判例

血清CRP定量法事件

出願経過が参酌されたことで権利行使に失敗した裁判例の1つに、血清CRP定量法事件(平成10年(ネ)第5507号)があります。この事件では、出願人の主張が権利化の時と、訴訟の時とで、矛盾していたため、禁反言の法理が適用された事件です。これによって、特許権非侵害と認定されました。

事件の概要

出願人は権利化のときに「本件発明と、自動定量技術とは異なる」と主張していました。そして、その主張が認められて、特許登録されました。しかし、出願人は訴訟のときに「イ号方法は本件発明の技術的範囲に属する」と主張しました。イ号方法は、自動定量技術の一種でした。このため裁判所は禁反言の法理に照らして、このような主張は認められず、イ号方法は本件発明の技術的範囲に属しない(特許権非侵害)と判断しました。

これは、判決文の以下の記載から読み取ることができます。

控訴人は、一方で、自動定量技術と本件発明とは別な技術で、容易に推考しうるものでもない旨主張して特許権を取得し、他方で、自動定量技術の一種であるイ号方法が本件発明の技術的範囲に属すると主張しているのであって、禁反言の法理に照らし、このような主張が許されるものではないことは明らかというべきである。したがって、禁反言の法理の側面からも、イ号方法は、本件発明の技術的範囲に属しないものといわなければならない。

平成10年(ネ)第5507号

出願経過はかなりチェックされている

訴訟の時に限らず、出願経過は日常的にかなりチェックされています。
例えば、私が特許事務所に勤務していたころ、クライアントからの依頼で鑑定をする時には、対象特許の意見書や手続補正書を必ずチェックするようにしていました。そこに発明の特徴部分と認められる部分が書いてあることが多いからです。品質にめちゃ厳しい上司や知財にあまり詳しくないクライアントにも、「出願経過書類にこう書いてあるからOK」という具合に、説得力のある説明ができたので、出願経過を参酌して鑑定を進めるやり方は良かったのだと思います。

企業の知財部でも、出願経過を確認する実務が定着しているところが多いように思います。日本の企業は訴訟をあまりしないと言われていますが、訴訟になった時の準備には余念がない印象です。企業の知財部では、訴訟に至った時のカウンターとして出願経過書類を日常的にチェックしているようです。

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