米国特許112条(b)の拒絶理由と112条(f)との同時通知
米国での特許出願の審査では、請求項の用語がMeansPlusFunctionクレーム(以下、「MPFクレーム」という。)と判断されると、米国特許112条(f)が通知されます。112条(f)は、通常のOfficeActionと一緒に通知されますが、拒絶理由ではありません。しかし、他の拒絶理由と一緒に通知されることがあります。特に112条(b)の拒絶理由と同時に通知されることがよくあります。この組み合わせは、場合によっては対応困難な厄介な組み合わせです。
参考:米国特許112条(f)の通知は拒絶理由通知ではない
米国特許112条(b)の拒絶理由とは?
米国112条(b)の拒絶理由は記載不備です。日本の拒絶理由で例えると36条関係です(個人的には明確性要件違反だと思っています)。米国112条(b)の拒絶理由は、例えば、クレームに相対的な表現が使われているけれどその基準が分からない場合や、クレームの用語の意味が不明な場合に通知されます。相対的な表現とは、早い、遅い、大きい、小さい等の物事を形容するための表現がよく知られています。例えば、早いという表現を用いる場合、何よりも早いのか?という基準が分かる記載にする必要があります。用語の意味とは、その言葉の定義や、その用語を体現する具体的な構成です。例えば、温度検出部という用語を使う場合、温度検出部とは具体的には体温計なのか、室温計なのか、具体的にしておく必要があります。このようにクレームの記載に不明確な内容が含まれている場合、112条(b)の拒絶理由が通知されます。
112条(b)及び112条(f)が同時に通知される場合とは?
112条(b)及び112条(f)が同時に通知される具体例
112条(b)及び112条(f)が同時に通知される場合について具体的な例を使って説明します。112条(b)及び112条(f)は、MPFクレームと判断された用語について、その用語を体現する具体的な構成が明細書に書かれていない場合に通知されます。
具体的には、generation unit(生成部)のような用語がMPFクレームと判断された場合、このgeneration unitに対して112条(f)が通知されます。そして、このgeneration unitを体現する具体的な構成が明細書に書かれてなければ、112条(b)も併せて通知されます。ここで、具体的な構成とは何か?というと、このgeneration unitの物は何か?ということです。もっと具体的に言うと、このgeneration unitがプロセッサなのか、スピーカーなのか、ランプなのか、 generation unitだけではわからないということを審査官は通知しています。
112条(b)と112条(f)とが同時に通知された場合の対策
112条(b)と112条(f)とが同時に通知された場合、generation unitがプロセッサであるならば、generation unitをprocessorに補正すれば、112条(b)及び112条(f)どちらも解消されると思います。スピーカー、ランプの場合も同様に補正すればOKです。このように明細書にクレームの具体的な構成が記載されていれば対策は難しくありません。しかし、出願時の明細書にgeneration unitの構成が書かれていない、つまりプロセッサなのか、スピーカーなのか、ランプなのか、書いてない場合には補正できません。こうなると、拒絶理由を解消できなくなります。こうなると、詰みが脳裏をよぎります。
米国特許実務をもっと勉強するには?
米国特許実務の本は色々と出版されていますが、私は米国特許実務-米国実務家による解説-を使って仕事をしています。出願から権利化まで適宜条文やMPEPを参照しながら説明してくれています。特に、索引が条文番号やMPEP番号で検索できるので、調べたい事例に一発でアクセスできて便利です。