米国特許112条(f)の通知は拒絶理由通知ではない

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外国出願で一番人気は米国出願

 PCT出願を使って外国出願をする日本企業が増えてきています。
参考:PCT出願(国際出願)するだけで世界で特許をとれるわけではない話
その中でも、一番人気は米国への特許出願です。企業によっては、日本には出願せず、いきなり米国に出願するという企業もあるほどです。しかし、日本と米国とでは、特許法は異なりますし、その実務も異なってきます。その1つが、112条(f)の通知でしょう。Office Actionの時に拒絶理由通知と一緒に通知されたりするので、拒絶理由通知と勘違いしてしまいそうですが、これは拒絶理由通知ではありません。

米国特許112条(f)とは何か?

米国特許112条(f)はMPFクレームであることの通知

 米国特許112条(f)の通知は、対象のクレーム(請求項)がMeansPlusFunctionクレーム(以下「MPFクレーム」という。)であることを通知しています。MPFクレームは、発明の特徴を物ではなく、機能で捉えて記載されたクレームです。米国では112条(f)にMPFクレームの取り扱いについて規定をしています。MPFクレームと判断されたクレームの権利範囲は明細書に記載された構造等に限定して解釈されるので、想定よりも狭いクレームになる可能性があるので注意してください。特に、日本語明細書を機械的に翻訳したようなクレームは、112条(f)が通知されやすい表現になっていることが多く、チェック必須だと思っています。

112条(f)は拒絶理由ではない

 米国特許112条(f)の通知は拒絶理由通知ではありません。あくまでもクレームがMPFクレームとして解釈されたことを通知しているだけです。出願人がMPFクレームを意図して出願しているのであれば、気にする必要はありません。しかし、意図せずMPFクレームと解釈された場合には、補正等の応答が必要になります。

112条(f)が適用されないようにするには

 クレームが112条(f)に該当するか否かは、米国の審査基準(MPEP2181)に規定されています。このため、112条(f)が適用されないようにするには、このMPEP2181の要件を満たさないようにすればよいです。この要件は以下の3つです。

(A)クレーム限定が,クレームされた機能を果たすために用語「ミーンズ」,「ステップ」又は一般的代用語(特定の構造的意味を有さない臨時語又は非構造的用語とも呼称される)である「ミーンズ」の代替として用いられた用語を使用していること;
(B)用語「ミーンズ」,「ステップ」又は一般的代用語が,典型的には,機能的文言によって 修飾されているが,転換語「のための(for)」(例えば,「ミーンズのための(means for)」)又は「のために構成された(configured to)」若しくは「となるように(so that)」のような別 の接続詞又は接続句によって常には接続されていないこと;及び
(C)用語「ミーンズ」,「ステップ」又は一般的代用語が,クレームされた機能を果たすために十分な構造,材料又は行為によって修飾されていないこと。

アメリカ合衆国 特許審判便覧(MPEP)第2100章特許性 第9版2017年8月更新 2018年1月版(特許庁)

 具体的には、クレームの構成要件に”Means for”(手段)や、”step for”(ステップ)を記載しないように翻訳クレームをチェックすることです。しかし、それだけでは不十分で、代用語でも112条(f)が適用されることが増えてきました。それを受けて、私が特許事務所で働いていたころは、”Unit”と”Module”等の代用語の有無についてもしっかりチェックしていました(今もですが…)。このように審査基準(MPEP2181)に該当しないように、翻訳文をきちんとチェックすることで112条(f)が通知される可能性をかなり下げることが可能です。確認が面倒な場合は、弁理士に相談しましょう。

米国特許実務をもっと勉強するには?

米国特許実務の本は色々と出版されていますが、私は米国特許実務-米国実務家による解説-を使って仕事をしています。出願から権利化まで適宜条文やMPEPを参照しながら説明してくれています。特に、索引が条文番号やMPEP番号で検索できるので、調べたい事例に一発でアクセスできて便利です。

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