PCT出願(国際出願)するだけで世界で特許をとれるわけではない話

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PCT出願(国際出願)について

 外国で特許権を取得する方法の1つにPCT出願(国際出願)があります。PCT出願は、世界各国に特許出願をするための手間を軽減できる出願方法です。このため、世界あちこちで特許をとりたいと考えている企業、とりわけ大企業にはよく使われている制度です。しかし、PCT出願をするだけで自動的に世界中で特許権を取得できるわけではない点に注意してください。

中小企業でPCT出願が増加傾向

 中小企業でPCT出願の数が増加しつつあるようです。例えば、特許庁によれば、昨年は5072件のPCT出願が中小企業からされたようです。この数字は、前年比6.9%増で、2010年以降で最も多い数値のようです。ちなみに、この5072という数字が日本のPCT出願全体でどれくらいかというと、大体1割強です。WIPOの情報によれば、2020年の日本のPCT出願件数は50520件となっています。特許庁は中小企業の知財を保護するような施策をうちだしているはずなので、その施策がうまくいっているということでしょうね。
参考:特許出願の国際的制度 中小企業で利用増加
参考:国別の2020年PCT出願件数(WIPO)
参考:特許庁の中小企業への支援策

PCT出願の流れ

 PCT出願の流れは次のようになります。

日本に出願した後にPCT出願する場合

 この図は、米国及び中国でPCT出願を使って特許権を取る流れを示しています。図ではまず日本出願の日から12か月以内にパリ優先権を主張してPCT出願を行っています。次に、PCT出願をした日から18か月以内に米国及び中国に移行して翻訳文を提出しています。最後に、各国で審査を受けて、特許査定が出れば特許権を獲得できます。

直接PCT出願する場合

 日本に特許出願せずにいきなりPCT出願をすることも可能です。これをダイレクトPCTと呼んだりします。ダイレクトPCTでは、外国への移行及び翻訳文提出の期限は、PCT出願の日から30か月になります。ダイレクトPCTでは、日本出願を省略できるので、費用総額が安くなるというメリットがあります。最初から外国出願するつもりでしたら試してもよいと思います。また、実際にそのような企業もあります。

PCT出願で特許権をとれない国

PCT出願で特許権をとれない国には大きく2つのパターンがあります。
1つめは、PCT出願後に移行をしていない国です。2つめは、特許協力条約に加盟していない国です。

移行をしてない国

 移行とは、特許取得を希望する国の特許庁に出願を係属させるための手続きです。移行は、PCT出願後に特許取得を希望する国ごとに行う必要があります。移行はPCT出願日または日本出願日のうち早い日から30か月以内に行う必要がありますので、忘れないように注意しましょう。なお、移行にあたっては、それまでにその国の言語に翻訳しておくことが必要なので注意してください。上の図では、米国には英語に、中国には中国語に翻訳をする必要があります。

特許協力条約に加盟していない国

 また、特許協力条約という条約に加盟していない国は、PCT出願を使って特許権を取得することができません。特許協力条約に加盟していない国で代表的な国は台湾です。台湾は2021年7月時点では、特許協力条約に加盟していません。このため、台湾で特許権を取得するには、優先権を主張して直接出願することが必要です。

PCT出願をより詳しく勉強するには

 PCT出願は細かな手続きやルールが多く、条文を読んだだけではよくわかりません。しかし、手続きの流れを図にすれば、比較的簡単に理解できます。図は条文を見ながら自分で作ると大変なので、図になった資料を使いながら勉強することがお勧めです。弁理士試験予備校のテキストは図示されているので、お勧めです。ただし、予備校のテキストは入手しにくいです。その場合には上記のPCTの活用と実務 改訂版がお勧めです。2021年7月時点では最新?の本であり、手続きの流れが図示もされています。

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