特許調査において再現率を重視したほうがよい検索とは

 特許調査には、適合率・再現率という2つの指標があります。適合率・再現率のどちらも、特許調査の結果として、有効な特許をどれくらい集められたかを示す指標になります。適合率・再現率はお互いにトレードオフの関係にありますので、調査者は特許調査の目的に応じて適合率又は再現率のどちらを重視するのか調査の方針を決めることが望ましいと思われます。本稿では、適合率・再現率のうち、再現率について説明します。

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再現率とは何か

再現率の定義

 再現率とは、正解(調査の目的に合致する特許文献)のうち、どれくらいの正解を検索結果の母集団に含めることができているかを示す割合です。再現率が高い検索結果ほど、正解となる特許文献を漏らすことなく検索出来ていることになります。

再現率の算出方法はない?

 再現率は以下の数式(1)を用いて算出できます。

 再現率=母集団に含まれる正解の数/検索対象全体に含まれる正解の数 …(1)

 しかし、これは理論上の算出方法です。実際上、分母(検索対象全体に含まれる正解の数)を知ることは不可能ではないかと考えられます。このため、再現率を正確に求めることはできないと考えています。そもそも、正解となる特許文献の数が分かっていれば、検索に苦労することもなくなるはずです。

再現率が高いほど、良い検索結果か?

 再現率が高いほど漏れのない検索結果であるとは言えますが、再現率が高いほど良い検索結果であるとは限りません。再現率は、全正解の中から、どれだけの正解を集められたかを示す割合を示しているだけであり、ノイズが含まれている量を考慮していないからです。ノイズとは、検索結果の母集団の中にある、調査の目的に合致しない特許文献です。ノイズの件数は、上記の数式(1)にも登場してこないように、再現率に影響を与えません。つまり、正解及びノイズのいずれも多く含まれた母集団は、高い再現率になりますが、適合率は低くなります。ノイズの多い検索結果は、精査に時間を要すことになり、調査効率を落とします。ちなみに、検索結果の母集団にノイズがどれくらい含まれているかを示す指標として、適合率があります。
 参考:特許調査において適合率を重視したほうがよい検索とは

 適合率と再現率とはトレードオフの関係になると言われています。再現率を高めると、適合率は下がり、適合率を高めると再現率は下がるという事です。再現率を重視するか、適合率を重視するかはその特許調査の目的に応じて決めることになります。

再現率を重視したほうがよい検索とは

 再現率を重視する検索は、侵害予防調査であると言われています。侵害予防調査は、製品やサービスのリリース前に、その製品やサービスが他社の特許権を侵害していないことを確認するための調査です。このため、侵害予防調査では、製品やサービスの内容に近い特許を見つけることも大切ですが、特許文献を漏れなく抽出することがとても重要になります。なお、侵害予防調査は、人によっては、FTO調査と呼ぶ場合もあるようです。

再現率をアップさせる検索手法

 再現率を正確に求める方法はないと考えています。このため、絶対適切な手段という確信があるわけではありませんが、私は、小さな母集団を複数作ることで再現率を高めるようにしています(適合率の記事で紹介したやり方と同じですね…)。

 適合率と再現率とはトレードオフの関係になると言われています。このため、適合率の高い検索式が1つでは、漏れる文献も多くなるかもしれません。しかし、適合率の高い検索式を複数作ることで、適合率を維持しながら、再現率も高めることができると考えています。ちなみに、検索式は適合率が高ければよく、検索結果に重複があっても構いません(下図参照)。

 ただ、再現率を重視するべき検索は、侵害予防調査であるため高い再現率が必要になります。このため、検索式の数は、論理和をとっても母集団が増えなくなる、またはノイズばかりが含まれるようになるくらいまで検索式を作ることになるかと思います。少し大変です。

まとめ

 本稿では再現率について紹介しました。正解(調査の目的に合致する特許文献)のうち、どれくらいの正解を検索結果の母集団に含めることができているかを示す割合を表します。再現率は適合率とトレードオフの関係にあります。再現率を重視する検索は侵害予防調査です。侵害予防調査を行う際には、再現率を高めることを意識した検索を行うことが望ましいでしょう。再現率を高めるためには、適合率の高い小さな母集団を複数作成して論理和を取ることで、高めることができると考えられます。

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