特許調査において適合率を重視したほうがよい検索とは

 特許調査には、適合率・再現率という2つの指標があります。適合率・再現率のどちらも、特許調査の結果として、有効な特許をどれくらい集められたかを示す指標になります。適合率・再現率はお互いにトレードオフの関係にありますので、調査者は特許調査の目的に応じて適合率又は再現率のどちらを重視するのか調査の方針を決めることが望ましいと思われます。本稿では、適合率・再現率のうち、適合率について説明します。

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適合率とは何か

適合率の定義

適合率とは、検索結果の母集団の中に含まれる正解となる特許文献の割合を表します。正解とは、調査の目的に合致する特許文献の事です。適合率が高いほど、検索結果にはノイズが少ないことになります。ノイズとは、調査の目的に合致しない特許文献の事です。

適合率の算出例

 適合率は以下の数式(1)を用いて算出できます。
  適合率=正解の数/母集団の数 …(1)

ここで、検索結果として得られた特許文献(母集団)の数が100件だとします。この100件の母集団のうち、正解の特許文献の数が50件だとします。この場合、適合率は0.5(50%)になります。

適合率が高いほど良い検索結果か?

 適合率は高いに越したことありません。しかし、適合率が高いほど良い検索結果であるとは限りません。下の図を見てください。これは特許調査の結果の一例を現した図です。〇が正解となる特許文献を表します。×がノイズとなる特許文献を表します。四角い枠で囲まれた範囲が検索結果です。枠の中には、〇が12個、×が3個あります。このため、適合率は0.8(=12/15)になります。しかし、枠の外には、まだ〇が11個も残っており、これらは検索結果に含まれていません。

 適合率は母集団の中に含まれる正解の割合を示した指標であり、調査目的に合致した特許文献のすべてが母集団に含まれているか否かを示す指標ではありません。つまり、適合率を高めても、調査目的に合致した特許文献に漏れがあるか否かは判断が付かないので注意が必要です。なお、ほかの11個の特許文献も検索結果に含めようとしたら(再現率を高めようとしたら)枠を大きくする必要があります。しかし、枠を大きくすると他の×も枠の中に含むことになり、適合率が下がります。これが、適合率と再現率とがトレードオフの関係になると言われる理由です。調査の中で、適合率を重視するか、再現率を重視するかはその特許調査の目的に応じて決めることになります。

適合率を重視したほうがよい調査とは

 適合率を重視する検索は、先行技術調査や無効資料調査であると言われています。先行技術調査とは、これから出願する発明が誰かに公開された発明でないかを確認する調査です。先行技術調査では、だいたい100件程度の特許文献を抽出して、発明が誰かに公開されたか否かを確認します。このため、適合率が高い母集団で調査を行うことで、より精度の高い調査を行うことができます。
 参考:先行技術調査は必要なのか?

 無効資料調査は、特定の特許権を無効にするための資料を探す調査です。このため、特定の特許権を無効にできそうな資料を見つけることができれば調査終了です。そのため、適合率の高い母集団を作ることができれば、効率的に調査を進めることができます。

適合率をアップさせるお勧め手法

 適合率をアップさせるには、小さな母集団を複数作ることをお勧めします。上述したように、検索結果の母集団が大きいほど、適合率は下がる傾向にあります。しかし、小さな母集団では、検索漏れも多くなります。これらのバランスをとるために、小さな母集団を複数作ることがお勧めです。具体的には下のようなイメージです。下図のように、母集団が小さくなるように検索式を作成し、そのような検索式を複数作成していくことで、ノイズが含まれないように正解を拾っていくことができます。

まとめ

 本稿では適合率について紹介しました。適合率は、検索結果の母集団の中に含まれる正解の割合を表します。適合率は再現率とはトレードオフの関係にあります。適合率を重視する検索は先行技術調査、無効資料調査です。これらの調査を行う際には、適合率を高めるように検索を行うことが望ましいでしょう。適合率を高めるためには、母集団の小さい検索式を作成していくことをお勧めします。

特許調査の勉強にお勧めの本

 特許調査(特に、先行技術調査)の勉強には、特許調査入門がお勧めです。本書は特許調査について、未経験の初心者にもわかりやすく説明している本です。適合率や再現率といった用語に関する説明に加えて、予備検索や本検索といった文献を検索するために必要な基本的な知識を習得できます。無料で使えるJ-PlatPatを用いて説明しているので、インターネットにアクセスできる環境であればだれでも本書を使って特許調査の勉強をすることができます。特許調査入門は、2021年5月の時点で第三版まで刊行されています。最新版を入手するようにしましょう。

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