先行技術調査は必要なのか?

 特許調査は、発明を特許出願する時や、新しい製品をリリースする時に行われる事前の調査の事です。特許調査は、その調査目的やタイミングに応じて5種類(先行技術、侵害予防、無効資料、技術動向、SDI)の調査があります。本稿では、この中の先行技術調査について説明を行います。

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先行技術調査の特徴

 先行技術調査とは、これから出願する発明が誰かに公開された発明でないかを確認する調査です。先行技術調査は、これから特許出願する発明に関して特許を取得できそうか否か確認するために行われる調査です。特許を出願するだけで30万前後の費用(弁理士手数料)が必要になります。しかし、費用をかけて特許出願をしても、すでに誰かが公開した発明であれば特許をとることはできず、特許をとれないとその費用が無駄になるからです。

先行技術調査の方法

 先行技術調査は、他の調査と同様に予備検索、本検索の順に行います。予備検索は、本検索を行うために使用されるFIやFターム等の分類情報を決定するための検索です。本検索は、予備検索で決定された分類情報や、発明に関するキーワードを用いて、調査対象となる母集団を決定するための検索です。そして、母集団に含まれる公報をチェックすることで、発明に新規性・進歩性がありそうか?といった判断を行います。

 先行技術調査では、適合率よりも再現率を重視して調査することが望ましいと言われています。適合率・再現率は、特許調査の精度を表す概念です。適合率は、検索結果の母集団の中に含まれる正解(発明に近い特許文献)の割合を表します。再現率は、発明に近い特許文献を、検索結果の母集団の中に含む割合を表します。

 先行技術調査では、約100件の特許文献を確認すれば十分だと思われます。100件という数字は、弁理士登録時の研修(実務修習)の時に習った数字なので、この数字はデファクトスタンダードになってきているのではないかと思います。数多くの文献を確認すれば、時間はかかるけれど高い精度で新規性・進歩性有無の判断は可能です。しかし、後の工程(出願等)のことを考えると、ほどほどのところで切り上げて、発明発掘や請求項の作成等の強い特許権を作る活動に注視したほうが良いと思われます。

先行技術調査は必要か?

 クライアントや発明者からは先行技術調査は必要なのか?と聞かれることがあります。このような質問が出てくる理由としては、先行技術調査を行った後に特許出願を行っても、拒絶理由通知は来るし、特許をとれないこともある。だから、先行技術調査をせずに最初から特許出願をした方が先行技術調査費用を節約できて良いんじゃないか?という理由です。

 このような質問に対する私の考えは、先行技術調査はしたほうがよいということです。上記理由の通り、先行技術調査の有無にかかわらず、拒絶理由通知は来るし、特許をとれないことはあります。しかし、特許を取る可能性を高めるというメリットのほうが勝るかなと考えています。先行技術調査を通じて、先行技術を含む広すぎる請求項を作る可能性を減らせます。また、先行技術を回避するためにどのような工夫をするべきか?といった検討も可能になります。つまり、先行技術に対して先回りで対応が取れます。これは、中間処理で先行技術を回避するよりも能動的な活動になり、単に特許を取るだけではなく、よりよい特許になりやすいと考えます。

 しかし、出願するなら先行技術調査は不要であると考えている方もいます(昔は私もそう考えていた)し、先行技術調査費用を節約したいというニーズもあるので、先行技術調査を何が何でもやるべきとまでは考えていません。どちらかの意見だけに流されず、双方の意見を知ったうえで自身の判断で先行技術調査をするか否かを決めることが良いと思います。

まとめ

 本稿では先行技術調査について紹介しました。先行技術調査は、これから特許出願する発明で特許を取得できそうか否か確認するために行われます。先行技術調査は予備検索、本検索を通じて約100件程度の母集団をチェックすることが良いでしょう。先行技術調査はやらなくてもよいという意見もありますが、私はよい特許を取るためには先行技術調査をやった方が良いと考えていますが、やらなくてもよいという意見もあるので、両方の意見を踏まえて先行技術調査をやるか否かを決めた方が良いです。

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