意匠登録出願から特許出願に変更された事例

意匠から特許への出願変更の事例ってあるの?と、聞かれたことありますか?
質問をされたとき、私はそんな事例を知らなかったので、ギクッとしました。
「知らない。」と回答するのも良くないと思い、J-PlatPatで調べたところ、1件だけ見つかりました。
なんと、1976年の出願です。
参考:意匠登録出願から特許出願への出願の変更とは?

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意匠から特許に変更出願されたかもしれない唯一の事例

特許公開公報を見たところ、書誌的事項は以下のようなものでした。
 出願日:1972年1月13日(もとの意匠の意匠登録出願日)
 出願番号:S49-26579
 出願公開番号:特開昭51-64625(リンク
 元の意匠登録出願番号:昭和49-7761号(親出願:昭和47-2597号)
 出願人:久保田鉄工株式会社
 審査結果:拒絶査定

出願日は、変更元の意匠登録出願の出願日です。
変更元の意匠登録出願は、分割出願でした。書誌的事項に親出願と書いてあるのはそのためです。
久保田鉄工株式会社は、現在の株式会社クボタですね。
代理人の先生もまだご健在のようです。

意匠登録出願から拒絶査定までの流れ

時系列を下図のようにまとめてみました。拒絶査定までの流れを図にまとめると、当時の特許法と現在の特許法との違いを見ることができます。

審査請求までの期間は出願から7年以内

昭和47年頃、審査請求できる期間は出願日から7年以内でした。今は出願日から3年以内です。
参考:審査請求のメリット・デメリットは何か?
元の意匠登録出願の出願日は、昭和47年1月13日でした。そして、変更出願の審査請求日は昭和51年9月13日です。このため、元の意匠登録出願の出願日から3年以上経過しており、現在の特許法では、昭和51年9月13日に審査請求をすることはできません。そもそも、時期的要件を満たさないので、変更手続きが却下されます。この事例における出願の変更は、当時が7年以内だったからできたものと思われます。

審査請求から拒絶理由通知まで2年以上かかっている

審査請求から拒絶理由通知までの期間が2年以上かかっています。
この期間は、現代の拒絶理由通知までの期間よりも2倍以上の期間を要しています。当時はこれくらいの期間が当たり前だったということです。いかに特許庁が必死になって審査期間の短縮を頑張ってきたのか、読み取ることができます。
 参考:特許行政年次報告書2020年版 1.審査・審判の審査・審理期間

出願変更された発明の内容について

出願変更された発明の内容について、幾つか気づいたところを挙げておきます。各公報は以下のリンクを参照してください。
参考:意匠登録出願の登録公報
   出願公開公報

意匠登録出願からは一部の図面しか使われていない

出願の変更をするにあたって、意匠登録出願で用いられた図面はすべて流用しているのかと思っていましたが、断面図しか流用されていませんでした。今まで私は、使える図面はすべて使うように明細書を作成してきたので、少し意外でした。
発明のポイントに関係ないことを明細書に書かないことは重要だと思いますが、出願の変更の際には元の意匠登録出願との同一性を疑われたときの反論材料として重要な図面になる気もします。

新しい図面が追加されている

意匠登録出願時の図面にない新しい図面(第2図)が追加されていました。
第2図は発明である菅継手にゴムパッキン6を追加した図です。こんな追加をして、同一性を維持できるのか?と思いました。
一応、発明の菅継手自体は意匠登録出願の図面と同じ形状であること、ゴムパッキン6は発明である菅継手の使い方を説明するための部材にすぎないこと、特許請求の範囲は菅継手に関するものであることから、ゴムパッキン6は、意匠登録出願時の内容に変更を加えるものではないので、意匠登録出願時の内容との同一性は保たれているという考えなのではないかと推測されます。ただ、思い切ったことをやっているなとは思います。

常日頃から図面を文章で説明する習慣が必要

意匠登録出願から特許出願に出願変更する場合、意匠登録出願の図面に書いてあることを明細書で説明することが必要になります。これは、図面の内容を明細書で説明する習慣を持っていなければ、対応することが難しい仕事だと思います。図面に書いてあるから、明細書にあえて書く必要がない。そんな意識で明細書を作る弁理士も見たことがありますが、やはり図面を文章で説明する訓練は必要だと思います。

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