審査請求のメリット・デメリットは何か?

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審査請求とは何か

審査請求とは、出願した特許について、特許庁に審査をしてもらう手続きです。
日本では特許を出願しただけ特許庁に審査されることはなく、特許出願後に審査請求を別途行う必要があります。
審査請求は日本以外にも、欧州、中国、韓国、台湾等の多くの国が採用している制度です。一方で米国は、審査請求制度を採用していません。このため、米国で特許出願すると、審査請求をすることなく審査が開始されます。

審査請求期間について

審査請求は特許出願の日から3年以内にすることができます。
特許出願の日から3年以内に審査請求をしない場合、その特許出願は取り下げたものとみなされます。一度した審査請求は取り下げることができないので注意してください。
また、審査請求は後述するように審査請求できる期間に例外を設けられている場合もあります。

分割出願が審査請求できる期間

出願が分割出願である場合、もとの特許出願の日から3年以内に審査請求をすることが必要です。つまり、分割出願は、審査請求するまでの期間が通常の特許出願よりも短期間になります。しかし、分割出願をした日がもとの特許出願の日から3年を経過している場合、分割出願の日から30日以内であれば、審査請求をすることができます。

変更出願等が審査請求できる期間

実用新案又は意匠から特許出願に変更をした変更出願や、実用新案登録に基づく特許出願についても、上述の分割出願と同様の期間で審査請求できます。つまり、もとの特許出願の日から3年以内に審査請求できます。そして、変更出願等をした日が、もとの特許出願の日から3年を経過している場合には、変更出願等の日から30日以内であれば、審査請求をすることができます。こちらも分割出願の場合と同様です。

優先権を主張した出願

優先権を主張した出願の審査請求は、優先権を主張した出願の日から3年以内にすることができます。分割出願や変更出願等とは異なる点に注意してください。

審査請求にかかる費用

審査請求には約15万円の特許庁費用と弁理士費用とが発生します。審査請求の費用のうち、特許庁費用は、118,000円に請求項数に4,000を乗じた費用が加算された費用になります。
例えば、請求項数が8個の特許出願を審査請求した場合には、ちょうど15万円の審査請求費用が発生します。
 内訳:118,000+(4,000*8,000)=150,000
また、依頼先である弁理士の手数料は、弁理士によって異なりますが、1万円~数万円程度が相場ではないかと思います。出願人自らが審査請求を行えば、弁理士の手数料は発生しません。
なお、中小企業、ベンチャー又は大学等の所定の条件を満たした法人等には、審査請求費用(特許庁費用)を割引してもらう制度があります。
参考: 2019年4月1日以降に審査請求をした案件の減免制度(新減免制度)について(特許庁)

審査請求から最初の通知までの期間

審査請求を行ってから、最初の通知がされるまでの期間は平均して9.5カ月(2019年実績)です。
出典:特許行政年次報告書2020年版 1.審査・審判の審査・審理期間
しかし、早期審査を活用することで、平均9.5カ月という期間を平均2.5カ月(2019年実績)に短縮することも可能です。早期審査を活用する出願は年々増加していますので、今後はもう少し審査期間が伸びるかもしれません。
出典:特許行政年次報告書2020年版 18.早期審査・早期審理

特許審査着手見通し時期の確認方法と活用方法
特許は審査請求手続きをすることで審査が開始されます。審査請求後に審査結果が通知されますが、最初の通知までには平均して10.1か月かかります(参考:特許行政年次報告書2022年版)。特許庁は審査着手見通し時期を公開しています。本稿では、審査...

審査請求をできる人

審査請求は何人でも審査請求をすることができます。つまり、他人の特許出願でも審査請求することができます。何人でも審査請求をすることを認めている理由は、その発明を実施したいと考えている人が、その出願の帰趨を早く知りたい場合などがあるためです。しかし、審査請求には費用が発生することや、第3者が警戒している特許であることを出願人が知ってしまう等、審査請求をした人には不利になることも多いと考えられます。したがって、審査請求が第3者によってされることはほとんどないと思います。

審査請求の知財戦略上のメリット・デメリット

特許出願の審査は、審査請求のあとに行われるため、審査請求をいつ行うのか、あるいは審査請求を行わないのかは、知的財産戦略上、重要なポイントになります。審査請求は特許出願の日から3年以内であれば可能という時期的な要件によって、以下のようなメリット・デメリットが生まれてくるからです。審査請求の時期はこれらのメリット・デメリットを勘案して決めることが良いでしょう。

審査請求のメリット

審査請求のメリットは、出願後に本当に必要な権利か否かを見極めできる点です。
審査請求は特許出願の日から3年以内に可能ですので、その3年間の間に本当に必要な発明か否か見極めることができます。例えば、出願はしたけれど、その後に特許権が必要なくなった場合には審査請求をしないということもできます。
あとから特許権が必要なくなる場合の例としては、研究開発の過程で商品の設計が変わったり、市場の成長が鈍化してお金をかけられなくなった場合などが挙げられます。

審査請求のデメリット

審査請求のデメリットは、権利の最終形が確定する時期が遅くなること、です。
特許の審査は、審査請求の後に開始されます。そして、審査請求を行ってから、最初の通知がされるまでの期間は平均して9.5カ月です。そのあとに、補正を行い、再度審査されて…とやっていると、出願から3年、4年、経過した後にどんな特許権になるのかわかってきます。
ただ、これは一概にデメリットと言いきれません。自社の特許の最終形が明確にはわからないため、競合他社から見れば、一応マークしておかなければならない面倒な出願になり、牽制に役立つこともあります。

審査請求を遅らせると権利行使できる期間が短くなる

特許権の存続期間は、特許出願の日から20年です。

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特許権の存続期間(有効期限)は出願日から20年 特許権の存続期間は、特許出願の日から20年です。しかし、例外的な発明もあります。例えば、医薬品の発明は、最大5年間、特許権の存続期間を延長させることができます。このため、医薬品の発明...

この存続期間は、審査請求の時期にかかわりません。そのため、審査請求の日を遅らせるほど、権利行使できる期間が短くなります。
例えば、下図は、特許出願と同時に審査請求した場合と、特許出願の日から3年後に審査請求した場合と、の特許権の存続期間を比較した一例です。
いずれも審査に2年かかっているものとして作成しています。

この図によると、特許出願と同時に審査請求した場合、特許権の存続期間は18年です。一方で、特許出願の日から3年後に審査請求した場合は、15年です。審査請求の期間に応じて、特許権の存続期間が短くなっていることが分かります。

特許法の基本について学ぶには

特許法の基本について体系的に学ぶにはネットで調べるよりも本を読む方が効率的です。
近年特許法は法改正が多く、ネットでは更新が間に合わないことも多いです。なるべく新しい本で学習することがおススメです。「標準特許法第7版」は、2020年12月に刊行された比較的新しい本で、特許法についてかなり詳しく解説がなされています。

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